牡丹山幼稚園・「ぴよぴよ文庫」の絵本をお引き受けすることになりました!

お知らせ

3月21日、寒の戻りで雪のちらつく寒い朝、大事な式典にお招きいただきました。その式典というのは、この3月で惜しくも閉園される、天良文庫からほど近い新潟市立牡丹山幼稚園(ブログへリンクします)さんの最後の園児達の「修了証書授与式」と53年の歴史に幕を閉じられる「閉園式」でした。

これまで園とは特に関わりのなかった天良文庫の世話人である私が呼ばれた一番の名目は、式典の中で「ぴよぴよ文庫・絵本贈呈式」があったからなのでした。

牡丹山幼稚園は開園から間もない頃から、眞壁葉子先生(その後、園長先生も務められる)のご提唱で「良い絵本をお話を子どもたちに手渡したい」との想いで園内に図書室を設けてこられました。それが「ぴよぴよ文庫」でした。園で絵本を貸し出すことで自宅での読み聞かせを推進し、親と子の絆を深めてきたとともに、園でも積極的におはなしの時間(絵本のみならず、紙芝居、昔話などの素語りも含め)を設けるなどして、幼稚園での絵本を活用した幼児教育に早くから力を入れてこられたそうです。

そんな半世紀近くにわたり親しまれた歴史ある「ぴよぴよ文庫」の大切な蔵書の中から、複数あるタイトルのものを1冊ずつ抜いて、天良文庫で今後も生かしてほしいと絵本・1170冊を贈呈くださることになったのです!! 本当に有難い話で、今も「私が引き受けてよいのだろうか…」と自問するくらい。

このようなご縁をいただいたのは、天良文庫を始める際に背中を押してくださった眞壁伍郎さん(奥様の眞壁葉子さんと一緒に「野の花文庫」(文庫訪問記へリンクします)という家庭文庫を45年間続けられました)が、昨夏「牡丹山幼稚園が閉園するにあたって、妻のところに縁ある方に絵本をお譲りするという案内が来ています。そのうちお尋ねになったら?」とお声をかけてくださったことがきっかけになっています。

それから少し経って秋頃、園に電話をしてみたところ、樋口泰子園長先生がお出になり「卒園児や関係者へ絵本をお譲りする期間は終了しているのだけど、まだ園児たちがいるので複数あるタイトルの絵本を1冊ずつ抜いてとっておいてあるんです。閉園時にもしよかったら天良文庫さんでそれらをお引き受けいただけませんか」とお話ししてくださったのでした。私は「そんな願ってもない話!」とびっくりしてしまったのですが、こんなチャンスは二度とないと思い、私でよければぜひお願いしたいとお返事しました。

それからあれよという間に時間が経った2月、園長先生と直接お会いし「ぴよぴよ文庫」とその蔵書を拝見させていただくことに。1月に過労で体調をくずされていた園長先生、きっと閉園が決まりさまざまな業務が重なっていたことと思います。そんな中先生にご案内いただき、私はますます「これは天良文庫にとっては間違えなく転機になる出来事だろうな」と身の引き締まる思いで見させていただきました。

廊下を歩いて園の離れにある「ぴよぴよ文庫室」。入口にはPTAのお母さんが手作りされたという看板がかけてあり、中に入るとだいぶ絵本が外に出されていたものの、沢山の貸し出された形跡の残る絵本たち、もう今では手に入らない絶版本や図鑑、科学絵本、お兄さんお姉さんになって読めるようになる児童書など、まだまだ沢山の本がありました。さらに本棚や組ごとに分かれた「ぴよぴよ文庫カード」入れなどの調度類も手作りの味のある木製のものが並んでいました。そして、本のある空間のあの独特な匂い…。ここで園児たちと親御さん、職員の方やお話をしにきてくれた方々と本を介して沢山の時間を紡いできたことを感じさせられ、園長先生はじめ関係者のみなさんの、閉園してしまうこと、文庫もなくなってしまうことへの惜別の思いがひしひしと伝わってきて、なんだか私まで心がキューっと締めつけられる思いがしました。

お引き受けする予定の絵本も見させていただきました。現在天良文庫の絵本が500冊程度なので、そこにはなくこれから購入したいと考えていた知っているタイトルのものも、もちろん知らない絵本もたくさん! とにかく千冊という絵本のボリュームを実際に拝見し、その重みを実感しました。この絵本たち、どうやってこれから生かしていこう?、家庭文庫を始めて1年という、それこそひよっこな私に何ができるのだろう? そんなことを漠然と考え始めて頭がグルグルしました。

それから3/21の絵本贈呈式までの間に、家族全員でもう一度園に寄らせていただき、絵本をじっくり拝見、本棚のサイズなどを計らせていただきました。「あー、いよいよなんだな」と思い、絵本たちに「これからどうぞよろしくね」と心の中で声をかけました。

その後いよいよ贈呈式を迎えたのでした。雪がちらついていましたが、不思議にも太陽の光も差し込み晴れたりあられが降ったりと、目まぐるしく空の表情が変化する、式典に参列する面々の複雑な心模様を写したような印象的な日。

「修了証書授与式」と「閉園式」は途中何度も涙が出てしまうような、心ああたまる素敵な手づくりの式でした。写真は撮れなかったけれど、ここに来られなかった卒園児やそのご家族の分まで「ぼたんやまようちえん」最後の立派な有り様を心に焼き付けました。

印象的だったのは、やはり園長先生や卒園児のお話にでてきた「ぴよぴよ文庫」でのエピソードです。文庫で借りた絵本が、文庫カードに記録されている数をかぞえたら800冊にも及んだという男の子、園時代の読み聞かせが本当に好きで、絵本も大好きで、親になってから毎晩の子ども達への絵本の読み聞かせが日課だったという女性、文庫があることで子どもたちと親と園とが一体となって心豊かに一緒になって成長できたことなど、印象深いものばかりでした。

私自身はPTAのお母さんから手作りの看板と目録を受け取り、一言(実際には一言とというわけにはいかず)言葉を述べさせていただき、無事「ぴよぴよ文庫・絵本贈呈式」を終えられてホッとしました。来賓の方々の中には、「天良文庫にぜひみてもらいたい本があって」「文庫の絵本たちを引き継いでくれてうれしい。昔話の会をやっているからあなたもぜひ入らない?」「ぜひ文庫を見にいかせて」などとお声をかけてくださる方もいて、次なる天良文庫の未来が広がりそうで感謝感謝な1日となりました。

園は閉園しても、ここで過ごした思い出は消えない。ここで育った「こころの根っこ」、撒いていただいた「たね」はまだまだこれから芽吹いていく、そんな関係者のみなさんの希望を全身に浴びて、私は「文庫のおばちゃんとして、私も私らしく歩んでいくぞ!」と決意を新たに頑張ろうと思いました。

樋口園長先生、眞壁さんご夫妻、そのほか天良文庫を応援してくださる皆様、本当にありがとうございます。絵本たちがこれからも活躍していく様子を、このHPでも引き続きお届けできると思います。どうぞこれからも見守っていただけたら嬉しいです。そして卒園されたみなさん、ぴよぴよ文庫ゆかりのみなさんも「絵本に会いたい」と思ったら、天良文庫にぜひ遊びにいらしてください! 文庫メンバーになっていただけたら、貸し出しなども行えたらと思います。

最後に天国の天良へひとこと。

ちょうど1年前の3/21、私が文庫を始めたその日、こんな1年後を想像もしていませんでした。天良が巡り合わせてくれたのかな。天良にしてあげたかったことが心残りで始めた文庫でもあるけど、いざ始めてみたら「天良にしてもらってるな〜」って感じることがいっぱいだよ。

ありがとうね。いつも想っているよ。

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