仙台の「まつお文庫」さんを訪問!

文庫訪問記

地域の子ども達を対象とした子ども文庫(家庭文庫・地域文庫)は全国津々浦々にあるようで、もし県外に行く機会があれば「その土地の文庫を訪れたい」とかねてより思っていました。そして12月初め、早速そのチャンスに巡まれました!

娘と2人、とあるライブのために仙台へ行くことになったため、仙台市内の家庭文庫をインターネットで検索。最初に目に飛び込んできたのが、開設から46年目(‼️)を迎えるという「まつお文庫」さんでした。一体どうすればそんなに長く続けられるのだろう?文庫を運営する方にぜひお会いしてみたい!そう思い、11月お電話をしました。

電話に出られたのは、松尾福子さん。「まつお文庫」の運営者、その人でした。「新潟から」と伝えると驚かれて、でも嬉しそうに「じゃあぜひいらして」とお返事くださったのが嬉しく、訪問がとても楽しみになりました。

そして12/2当日。朝高速バスで仙台へ向かい、お昼前には到着。冷たい雨の新潟とうって変わって太平洋側のカラリと晴れた冬の仙台!仙台駅から歩いて行けるブックスポットということで、前から気になっていた「book cafe 火星の庭」や本屋「ボタン」にも立ち寄りました。駅周辺の通りではイチョウの黄葉が残っていて、風に吹かれサーッと落ちていく葉がとても美しく、道端の大量の落ち葉も美しく見えました。娘と一緒に記念に何枚か拾って持ち帰ったほど!

仙台駅に戻り、電車と徒歩で20分ちょっと、ついに「まつお文庫」さんへ! 日差しもあって気持ちの良い静かな住宅地を歩いていくと、ごく普通の(まわりの家々と比べてという意味で)お宅に控えめな「まつお文庫」の看板。

しかし中に入ると驚きの空間が待っていました! 玄関にはクリスマス飾りや「45周年おめでとう」のお手製の折り紙飾りなどがあり、すぐ右手に本のお部屋(6畳2間と増設した縁側部分)があって、その部屋に入った途端、私は思わず「わー、あったかい!!」と口にしていました。外が寒かったのも勿論あると思いますが、それ以上に、まつお文庫さんがこれまで歩んできた歴史(時間の厚み)が一気に私の身体に飛び込んできて、松尾さん御本人、そして主役であるたくさんの本たち(9000冊以上)に加え、手作りの飾りや玩具、壁に貼られた「○○周年記念講演会」の手書き幕、「今月の詩」が書かれた大きな紙、仏壇、(12月の)クリスマスの本や飾りのコーナー‥そこに在るものすべてが何かあたたかい熱や懐かしい空気を帯び、文庫の訪問者を受け入れてくれている、そんな感じがしたからでした。

私は圧倒されつつもウキウキして部屋を眺めていると、松尾さんがコーヒーを出してくださりました。ちょうど土曜日のこの日は、通常のオープン(15時〜18時)があるため、利用者の方がいらっしゃる少し前にお話を伺えたらと14時頃お邪魔したのでした。

娘と私は縁側の椅子に腰掛け、「文庫だより」(月1回の通信)や一年分の活動や利用者の寄稿、おたよりをまとめた記録冊子『なかま』といった松尾さんが丹精込めて制作されたものを拝見したり、手を使った〝遊び〟を大切にされているまつお文庫さんならではの、折り紙やブロック遊びを娘にも紹介していただいたりしながら(おかげで娘も退屈することなく)あっという間の小一時間、お話を伺うことができました。

印象に残ったことを会話で残しておこうと思います。(A:桾沢 M:松尾さん)

A「仙台には沢山文庫があるんですね」

M「そうね、仙台はけっこう文庫がある方かも。1974年結成の「仙台手をつなぐ文庫の会」という会に加わり活動してたの。これまでその会に加入した文庫が100を超えていて、そのうち94文庫について2010年のときに一冊の本(『文庫ぶんこbunko : 文庫調査報告』仙台手をつなぐ文庫の会、2010年)にまとめたのね。70〜80年代はとにかく子どもが沢山文庫に来ていた時代。今はどんどん文庫も減って、特にコロナで来る子どもの数も少なくなっているわね」

A「そんな中、46年目を迎えられ、すごいです。始めた頃はまだ二十代だったのですね?」

M「割と早くに結婚して子どももできて、それこそ子どもが3歳と5歳の時に文庫を始めたの」

A「同じです、私も息子が4歳で始めました。でもだから、月1回の会では毎回、家族や大人の助けがないとできません」

M「やっぱり子どもの友達のお母さんとか、始めて1年目くらいから支えてくださる人がいっぱいいて。その方たちが、お子さんがもう大きくなって、転勤などなくまだ仙台にいれば、今も来てくれている。そんな親御さんが多いんです」

A「新聞記事で、文庫を始められたきっかけに石井桃子さんの著書『子どもの図書館』をあげられていました」

M「そう。二十代の最後、中高一緒の学校で国語の教師をしていたのだけど、「もっと違った生き方がしたい」と思ったの。仕事も育児も家事も中途半端。家族を大事にしたような生き方ってないのかなと。いざ辞めて忙しさからは逃れられたけど、どうしようかって時に石井さんの『子どもの図書館』を思い出して、文庫は家でやれることで、我が子と一緒にできて、どこか社会につながるような活動かなと思って。それで半年準備期間をおいて1977年の10月から始めた。開設日の翌日が誕生日で30歳になった。だから30代からはすっかり文庫のおばさんね(笑)家族のための時間をつくろうと思ったのに、いつのまにか文庫のことに一生懸命になっていた。開館日は週2回水曜・土曜日の午後。その頃、水曜と土曜は小学生が早く帰れる時代だったから」

A「まつお文庫では〝あそびの学校〟と銘打って、大人に色々な伝承遊びを教える機会もありますよね。ちょっとしたサロンみたいな」

M「〝あそびの学校〟を始めたのは、子どもがどんどん少なくなってきて、文庫でやっている手作りの遊びを折り紙にしろ何にしろ、それをとにかく大人の人にお伝えしたいなと思ったの。大人に伝えれば、その近くにいるお子さんに届いていくから。保育所、児童館の方が土曜だったので来てくれて」

A「この場所でずっと文庫を?」

M「最初は親と同居していた家で始めたのだけど、1年目くらいからはどんどん文庫に来る子どもが増えて100人超えることもあった。今の家は1986年からだから、それでも当初の6畳2間というのは一緒ね」

A「100人って入るんですか??」

M「今の子は親子で最初から最後までいるような子が多いけど、当時は子どもだけで来て、本を借りて帰っていくという子も多かったから。中には手作りの折り紙とかつくりものが好きな子がいてそういう子は長い時間居て楽しんでいったけど、本だけ楽しみにして来ていた子は、借りて帰るって感じだった」

M「この家を建てた時に、文庫のために本棚を備え付けにしたの。この部屋側と廊下側両面に収納できる壁収納を。でも本はどんどん増えていくの。2000年にこの縁側部分を増築して、そこにも備え付けの本箱を入れたけどまだ足りない。本棚を新たに購入して、また増えて…(笑)」

A「管理も大変そうですね」

M「絵本と読み物とを色分けしてラベルシールを貼って、あとはそれぞれ入ってきた順に通し番号をつけているの。冊数把握のためにね」

A「なるほど!参考になります」

A「まつお文庫は、対象も子どもから大人まで、毎週のおはなし会に季節のイベントごと、講演会などの特別企画、あそびの学校、さらに毎月と年一回の通信・冊子の発行まで、一つの家庭文庫でやっていらっしゃることの範囲があまりに広く、また一つ一つが充実していて本当に驚きます!」

M「文庫は本当にその人のやり方でいいと思う。その方がやりたいと思ったら何でもやれる。それが家庭文庫の一番嬉しいところね。本を通して、遊びを通してやれることっていっぱいありそうよね。その人ができる範囲で、できる形でやっていくしかないよね。それでその人の文庫の形ができていくのかなって」

A「そうですね。すごく励みになります!」

【話題は詩にうつり、、、】

A「この「今月の詩」というのは?」

M「もう「今月の詩」を始めて30年は超えているわね。毎月「文庫だより」を出す時に掲載して、お話し会で必ず読むようにしていて。子どもは詩が大好き。『のはらうた』の工藤直子さんとか、素敵よ。この本、文庫に来た子どもが絵本を読むみたいに私のところに持ってきて「おばちゃんこれ読んで」って言うの。1989年の夏、東京のある研修会で詩の分科会があって参加したら、明星学園の先生が詩の教育実践をされていて「子ども達は詩が好き」という話をされていた。「やっぱり、そうなんだ!」と思って、仙台に帰ってからすぐに「今月の詩」を始めたの。詩って、自然がうたわれていることがあるじゃない?四季折々の自然の世界を自分では伝えたくてもなかなか伝えられないけど、詩人の感性で伝えられるじゃない?声に出して詩だけで。たとえば、みずかみかずよさんなんか私は大好きなので、読みましょう。この方は秋の詩にいいものがいくつもあるのよ」

そうおっしゃる松尾さんは、その場で私たちに「おちば」という詩を読んでくださいました。

「おちば」  みずかみかずよ (『いのち』石風社より)

松尾さんのあたたかい優しいお声で「おちば」を朗読してくださり、またこの詩の内容自体も、本当にこの日仙台で体験したばかりのこととリンクし、スーッと染み込むように言葉が入ってくるのを感じ、私は感動して涙が・・。ここでうたわれている「落ち葉」がなんだか天良とも重なったのだと思います。詩人というのは、そんな私の個人的な心象風景も、この数少ない言葉で代弁してしまうのかと、なんとも言えず初めての心震える体験でした。これまでも詩集というものは、自分で買ったり、どこかで手にとってみたり、友人からいただいたりと自宅に数冊持ってはいましたが、この日の私には「その言葉が必要だった」と思えるくらいの感覚で「詩」と出会えた気がしました。そこで「私も天良文庫で詩を読んでみよう!」と思い、新潟に帰ってさっそく松尾さんの教えてくださった工藤直子さん、まどみちおさん、谷川俊太郎さんなどの詩集を読んでみることに。4、5歳の子どもたちにどんな詩を届けたらいいのだろうと悩みますが、まずは反応を見ながら来年(2024年)からやってみようと思います。

ということで、新年に向けて新たにやってみたいことも見つかり、仙台の「まつお文庫」さんを訪問して、松尾さんと出会えて、私は本当に人との出会いに恵まれているなと思いました。この先どのくらい文庫活動ができるかはわかりませんが、私が最初に描いた天良文庫のイメージを実現できるまでは、できるだけのことはやってみたいと思います。訪問から一か月位経って今この文章を書いていますが、あの時松尾さんからいただいた熱(エネルギー)は今も私の心を温め続けていてくれていますし、「あぁ文庫ってそこに集まる人を誰でも受け入れてあたためてくれる、囲炉裏みたいな場所だな」と実感したのでした。そんな場所に天良文庫もいつかなれたらいいなと、思うのでした。

松尾さん、この度は本当にありがとうございました。どうかお元気で、まつお文庫をお続けください。

まつお文庫 仙台市若林区中倉にある家庭文庫 <水・土の15~18時(第2土曜はお休み)>

※会話メモの中で、年号詳細は、松尾さん編集・制作の『なかま』第44号の「文庫のあしあと」を参考にさせていただきました。45年の活動年表!その歴史の厚みにただただ感銘です(桾沢拝)

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