5月は2つの絵本の家「ゆきぼうし」&「とんとん」を訪問!

文庫訪問記

まめぐるしく過ぎていった5月、新潟県内の2つの文庫を訪問しました。

5/7 「絵本の家 ゆきぼうし」(魚沼市)、5/27「絵本の家 とんとん」(加茂市)です。「絵本の家」が名前につくので関係があるのかなと思ったら、実際、お話を伺うと関わりがあったようです!

これら2つの文庫、共通に感じたのは、〝本というものを介して地域内外の人が集える、開かれた、あたたかで安心できる空間が醸成されている〟ことでした。訪問から時間が経ってしまったのですが、記憶を辿りつつ振り返ってみます。

まずは、魚沼市の守門(すもん)というスキー場などで知られる山間エリア(豪雪地帯!)にある「絵本の家 ゆきぼうし」から。ゆきぼうしの成り立ちは、以下の看板に。

看板にある〝森のおじさん〟が今は亡き大塚中(あたる)さん、〝絵本のおばさん〟が大塚千恵さん。お二人が長年文庫をやってこられたそうです。絵本、童話・民話・自然の本など、本の総数は9,000冊を優に超えているとか!すごい…。今は遠方にいらっしゃる千恵さんのかわりに、周辺地域の多くの協力者、スタッフの皆さんが運営に関わっていらして、本の整理・登録・貸出・管理からイベントの開催、庭も含めた場所の管理、年4回の「ゆきぼうし通信」の発行に至るまで多彩な活動を続けていらっしゃいます。

5/7はあいにくの雨模様でしたが、HPで事前に拝見したところ、当日「森の春を見つけよう!!」という素敵な屋外イベントが予定されていました。現地に着くとすぐに、絵本の家の山小屋が見えてきて、その背後には散策できる森(通称:フーのきの森、「朴(ホオ)の木」の方言で「フー」と呼ぶのだそう!)が広がっているようでした。ちょうどスタッフのみなさんが、森散策を始めようとされていたところだったので、私たち家族も傘にカッパを着て飛び入り参加!

名も知らない草木の実や葉を、足をとめてしげしげと眺め、スタッフの方に名前を教えてもらったり、雨露に濡れキラキラ輝く山菜や春の草木の芽吹きを確認したりと目にも心にも瑞々しい時間。動き出した虫の気配に鳥たちの鳴き声、また窪地の池には、サンショウウオの仲間の卵を発見!アカハライモリもいて、スタッフのお一人が幼いアカハライモリを手でキャッチ!「かわいい〜」と皆で動画を撮ったり、楽しい散策になりました。絵本に出てくる草花や生き物にこうして実際に触れられるというのは、なんとも贅沢で貴重な体験。そして、何より日々の忙しい時間を忘れ、自然とリラックスできるのがよかったです。(当日のイベント記事はこちらの5/7の投稿へ)

後でわかったことですが、ゆきぼうしが大切にしているのは、【本とともだち】【自然となかよし】ということなのだそう。そんな素敵なモットーどおり、絵本と自然と一体となったこの場所ならではの魅力が、ここで数時間過ごすことで味わえる、またそれを子どもや集まった誰かと共有するのを心から楽しめる。開設に携わった大塚中・千恵さんご夫妻の夢が実り、協力者やスタッフのみなさんとともに大きく膨らみ、今なお本と自然と子ども達とともに育ち続けている場所なんだなと感じました。

スタッフの皆さん、楽しい時間をありがとうございました。また、ぜひ遊びに伺います!

《絵本の家 ゆきぼうし 写真ギャラリー》

続いて5/27(土)の午後に「絵本の家 とんとん」を訪問! 

雪椿にあじさい、加茂川の鯉のぼりで有名な加茂市の住宅街にある家庭文庫です。開設はちょうど10年前の2013年秋。元保育士だった山田泰子さんが、「大好きな絵本を通して子育てを応援したい」との思いから開設されました。

そのきっかけの一つに、先ほどの「絵本の家 ゆきぼうし」の存在があったそう。40代で初めてゆきぼうしを訪れて以来、すっかりその空間に魅了された山田さんは、魚沼まで足繁く通うようになり、あるとき帰りの車内で旦那様に「いつかわたしもこんな場所をつくりたい!」と夢を語ったそうです。そしてゆきぼうし開設者の大塚千恵さんの「やりたいことはやってみなさい」という後押しも受け、自ずと夢は実現に向けて動き出したんだそうです。「自ずと」と言ったのは、勿論ご本人がそうするべく考え、行動し、努力されたこともあったのですが、「絵本の家 とんとん」をやるぞとなってからは、その名の通りトントン拍子に事が進んでいったとのことで、「自ずと」とあえて言わせてもらいました。

一見優しくおっとりとされた山田さんですが、お話を伺うとその行動力はエネルギッシュというか、情熱を感じます。きっとその想いに周りのみなさんがひっぱられ「絵本の家 とんとん」はできていったのだなと感じます。53歳で保育士を早期退職、自宅の隣地にあった空き地に目をつけ、そのオーナーに連絡を取ると、なんと土地主が地元建設会社さんで。そのご縁で建物の設計工事を依頼し、長年保育士として頑張られた大切な積み重ねである退職金をかけて、素敵な三角屋根の絵本の家が完成!

絵本は保育士時代から買い集めているもの、保育園時代から付き合いのあった定期購読えほん(『こどものとも』など)の購読を今なお続けており、2,000冊以上に。それらが低めの本棚にびっしりと並んでいます。子どもが思い思いに本を読んだり宿題したり自由に過ごせる机や、絵本の読み聞かせや様々なお話会にもってこいの楕円状の〝いろり(囲炉裏)〟のような床座空間、親子トイレなど、すみずみまで配慮の行き届いた空間になっていました。建物のコンセプトは「子どもとお母さんがここへ来て安心して安全に過ごせる場所」だそう。建設会社さんにそう依頼したこと、山田さん宅の座って遊べる年季の入った木馬をご覧になった設計士の方がその木馬に想を得て、木目が見えて、平屋建てではあるけど天井の高い山小屋のような空間をデザインされたようです。確かに子どもも大人も安心して過ごせて、ハード面だけではなく、心躍るような楽しげな空間でした。

《山田さんのお話の中で、印象的だったこと》

⚫︎山田さんは地元加茂市の昔話の語り部サークルである「ほいねの会」(2006年発足)のメンバーでいらして、(コロナ前は)奇数月の第2日曜にメンバーで集まって昔話の語りを学んだり、互いに語りを聞き合うなどの活動のほか、市内の高齢者施設や小学校・保育園で語りを披露したり、語り部育成講座も開いたりされているという。「ほいね」というのは、加茂弁で「どうぞ」という意味。お菓子を差し出して「ほいねほいね おあがりなさい」といった具合に使うんだそうです。加茂にむかしから口伝で語り継がれてきた昔話の魅力を次世代に残したい、祖父母から語ってもらった懐かしいあの思い出をもう一度味わいたい…さまざまな思いがきっと活動されているメンバーにはおありなのかもしれません。加茂弁で語られる昔話、私もぜひ味わってみたい。そして私もいつか新潟の昔話の1つくらいは子どもたちに語れるようになりたい。「あったんてんがの〜」で始まる越後の昔話に興味があります。その独特な方言混じりの語りは、お話の内容とひとつになって聞き手の心に何かを残してくれるんじゃないかなと想像します。

⚫︎(私が「絵本はどんなふうに並べているんですか?」と質問すると・・・)とんとんには、歩きはじめくらいの1、2歳のお子さんがお母さんと一緒に来られることが多い。子どもたちの中には、絵本を興味本位でドバーッと本棚から出してごちゃごちゃにしてしまうこともままあると言います。焦るお母さんに対し、山田さんは「いいのよ〜全部絵本を出して」って言っているそう。「ストレスフリーが一番!気にしないでやらせてあげて」とおっしゃる山田さん。私は「なるほどなぁ。図書室とか貸出目線での整理を主眼に置いて(大人目線だけで)並べたり収納していると、気づかない視点だな。自分は今後自宅にどんな本を置いて、どんな並べ方をしていこうか。杓子定規で偏った視点に陥らないようにしたいな。何を大切にしたいのかを考えなくては」と気づかされました。

《絵本の家 とんとん 写真ギャラリー》

1時間半ほどの滞在中に、同行した息子は山田さんに昔話絵本『さんまいのおふだ』を読んでもらったり、「ぐんちゃんの庭」という同じく加茂市内で地域のコミュニティスペースを運営されているTさんと一緒に折り紙をしたり、大満足だったようです。

住んでいる地域に自分の子どもだけでなく、他の子どものこと、その親のことも考え慮って、こうして場所を開放してくださる方がいる。心のどこかで「安心な場所があり、語れる人がいる」ことを感じさせてくれる。それだけで救われる誰かがいるんじゃないかなと、とんとんを訪問し、山田さんとお会いして実感しました。

8月には「絵本の家 とんとん」10周年記念イベントを予定されているとか!ぜひ伺いたいですし、同月、語り手の大先輩である山田さんを天良文庫にお招きして、子どもたちにお話をしてもらいたいなと密かに企んでいます。そちらもお楽しみに!!

最後におまけ。

私が天良文庫を始めたいきさつなど、息子・天良の話をした後、ゆきぼうしのスタッフさんにおすすめいただいた一冊です。その場で読ませてもらい、じんわりと温かい気持ちになりました。「そうだよね。おしまいにはならない。ずっと何かの形になって続いていくものだよね」

こんなふうに誰かの話を聞いて、相手に寄り添ってくれる本をそっと手渡せる、そんな人に私もなりたいなと思いました。ありがとうございます。

『かぜは どこへいくの』(作:シャーロット=ゾロトウ 画:ハワード=ノッツ 訳:松岡享子)

アメリカでの書評(絵本カバーに記載あり)・・・「昼がおしまいになったら、お日さまはどこへいくの?」「風がやんだら、そのあとどこへいくの?」小さな男の子には、ふしぎなことがいっぱいあります。母親は、この世のものはすべて終るのではなく、別の所でふたたび、ちがった形ではじまることを、わかりやすく教えます。母と子の対話には暖かさがあり、ノッツの繊細な鉛筆もやわらかくて魅力的です。<児童文学専門誌 ホーン・ブック>

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