「野の花文庫」へ訪問!

文庫訪問記
自宅から歩いていける距離に「野の花文庫」はありました

祝日だった2月23日、新潟市で45年(!)にわたり家庭文庫「野の花文庫」をご夫婦で続けてこられた眞壁伍郎さん、眞壁葉子さんにお会いしてきました。

「野の花文庫」を知ったのは、つい先日のこと。「家庭文庫をやりたい」という最初の思いを先走って投稿したFacebookで情報提供を呼びかけたところ、たまたま「野の花文庫」に親子で通われていたというTさんが教えて下さったことがきっかけでした。

インターネットで「野の花文庫」を調べると、なんと家の近所にあり、偶然にも娘の同級生のお祖父様、お祖母様がやっていらしたことがわかり、「え〜!○○ちゃん家!?」と思わず声をあげました。

是非ともお会いしたい、文庫を見学させていただきたいと思い、○○ちゃんのママに電話したところ、「今文庫は通常公開はしていないけれど、直接義父に相談してみて」と連絡先を教えてもらい、後日お電話して今回の訪問のOKをいただきました。

そして当日。子ども達を連れ、写真のような黄色い一軒家、フクロウの目印と「野の花文庫」の表札がかけられた玄関から「お邪魔しまーす」と中に入ると文庫は目の前の10〜12畳ほどの一部屋でした。(子どもはトイレが近いので、部屋のすぐ脇にトイレあり)部屋の四方に本棚が並び、窓がないところは天井まで本が埋まり、まさに本で囲まれた空間!

下2、3段は絵本、目の高さには少年少女向けの児童書が所狭しと本棚に収まり、さらには貴重書だらけの海外の絵本がダンボール箱に何箱も置かれていました。さまざまなブックリスト、児童文学関係の機関冊子なども並んでいました。

真ん中には大きな四角い机と椅子。ここで本を手にたくさんの子どもや大人たちの語らいや交感が繰り広げられていたのかと思うと、とても感慨深かったです。冊数もさることながら、空間からじわじわと発される、眞壁ご夫妻が文庫で大切に積み重ねてこられた50年近い時の重みを実感しました。

ある棚の前に立つと、表側に並んだ本の列のその奥にもう一列本があることに気がつき、奥側は少し古い装丁だったので「これ同じ本なのかな」とつぶやいたら、葉子さん「同じ本はほとんどないの」と。驚きでした!あまりの密度に目移りして写真を撮れずじまい…。

1時間半ほど、ご夫婦とお話させていただきました。(その間、子ども達は別棟の○○ちゃんの部屋で好きな漫画の交換会(笑))以下メモから、主に文庫についてのお話を記しておきます。

・伍郎さん24歳の時、当時高校を卒業したばかりの知人に声をかけ読書会を始めた(その頃、娘さんが誕生)。元々は大人の読書会であったそのジュニア版をやろうと考えた。前から文庫をやってみたいとご夫婦で話していたところ、娘さんが10歳(小3)になった時、「いつやるの?文庫するって言ったじゃない!」と娘さんからの後押しもあり「野の花文庫」を始めた。

・最初は自宅の居間で始めた。居間に本棚を置き、娘さんの友達に声をかけて文庫をスタート。ノートに貸出簿を作り、子ども達が自分で借りる本を書いた。自分たちが生活する空間で、(ご夫婦とも仕事をしていたけれど)「土曜日のその時間だけは文庫のためにあてる」ってなれば子ども達も親しみをもてるじゃない?それこそ家庭文庫ですよ。

・土曜日の午後、仕事を早々に終え帰ってきて準備して、14時(だいたいその前に子ども達は来ている)から30分くらい読み聞かせしたり、私も妻もそれぞれに読んであげて、あれこれ話をしたりして15時すぎには帰り始めるといった具合。習い事している子もいて、長い子でも滞在時間は1時間くらい。むしろ手伝いに来たり、文庫を見学に来る大人の方が長い(笑)

・1971年から2016年までの45年間、文庫は続けた。最初に来てくれた子ども達は60歳を超えている(すごい!!)。宣伝したことはなく、なんとなく「その時間やっているよ。一緒に来て本を読む?」という感じで友達が友達を呼んでどんどん広がって…。私たちもこれが楽しみになって続けられた。

・長く続ける秘訣は「楽しんでやる」「無理をしない」こと。義務でやってはだめ。時が経てば、自然と本はそろっていく。ただし「いい本をそろえること」それを常に意識していた。(いい本については後ほど→※へ)やっぱり大事なのは、本。どのくらい手元に置いて、貸し出すにも数が要る。それが大変だわね。 

・子ども達に何かを教えようとするよりも、ただ「野の花文庫」に来て、1時間でも2時間でもほっとできて、自由に本を読んで、好きなことを言って、そういう場であるようにした。ありがたいことに手伝いに来てくださった新潟県立女子短大(現・新潟県立大学←私の職場です!)の故田代俊子さん(幼児心理学がご専門)も子ども達の様子をよく見ていて、子どもに対するご関心を強くもたれていた方でした。

・“地域の子ども達とのつながり”が、私たちの文庫の真髄。子ども達の生活に触れることで、私自身元気をもらうんです。物はなくても楽しかった子ども時代のことも思い出したりして…。

・どんな本を読んであげるのがよいか… 一番にはその季節に合った本を選ぶこと。その季節季節の本は大事。いまここにその季節に生きているのだから、そのときどきの楽しさが子ども達にあるといい。

・(※)まず文庫を始めるという時に、おすすめするとしたら、東京こども図書館が出しているブックリスト、銀座にある子どもの本のみせ「教文館/ナルニア国」で常時取り揃えたいと努力しているという本が掲載されている児童図書館研究会刊『子どもに物語の読み聞かせを ~読み聞かせをに向く260話のリスト~』、『子どもに定番絵本の読み聞かせを ~選書眼を育てる360冊の絵本リスト~』あたりが参考になると思う。

東京こども図書館で配布されていた冊子とお借りしたブックリスト
眞壁さんご夫妻と私と子どもたちで記念撮影!(お孫さん撮影)

他にもここに載せられなかった沢山の興味深いお話をしていただき、数日たった今も反芻しています。

眞壁伍郎さんはアンデルセンの『絵のない絵本』に感動して、ドイツ語の対訳を高校生の時に読んだことがきっかけで、ドイツ文学の世界に入っていかれたとのこと。ご夫妻でよく話すのは、どの児童文学関係の人もアンデルセンに惹かれるんだそう。伍郎さん自身は、アンデルセンのいわゆる名作というものよりも、ごく当たり前の風景の中に物語を発見していく、それがアンデルセンの面白さだと。どこにでも物語が秘められている。それを見つける目が大事。子ども達はそれを持っているんですよね。文庫に来ていた子ども達が本を楽しむ姿を見ていると、本当に一つの世界に入り込んで、浸り込むことができる。忘れてもいいんですよ。ただその体験が実は人生を豊かにしていくんだから。ただ知識じゃないんです、知識を詰め込んでいくんじゃなくてね。

こうした地域の子ども達へのあたたかなご夫婦のお考えと眼差しがあって、ここまで文庫は続いてきたのだなと感動しました。

また、昔話についてのお話の中で、昔話というものはむかしからハッピーエンドなんですよ。そこに貫くのは、未来に対する期待なんです。IBBY(国際児童図書評議会)もポール・アザール(仏の文学史家)の『本・子ども•大人』でも、基本は未来に対する希望、平和を第一義としているんです。そのことを私たちは、この今だに戦争をやっている現在の世界においても、だからこそ心していかないといけないんですよね。若い人たちには愛国じゃなくて、“すべての人が一緒に生きていく”ような思いをどうしたら身につけていけるのか、そこは常に考えていかねばならないと思います。二代目のプーチンを育ててはいけないと。

今、眞壁さんは戦中戦後の子どもの本のブックリストの歴史について、詳しく調べているとのことでした。その時代、これからの子ども達に何を薦めようとしたのか興味があると。その考えに触れることで、今の時代どういう本を子どもたちに手渡すべきなのか、どういう生き方をすれば・・・、そういった壮大なこれからに向けての、眞壁さんご自身の後世へのメッセージを日々発信されていて(しかもLINEで!)、私はいたく刺激をいただきました。私もこれから数年後とは言わず、「今から」できることを少しずつやっていこう、そう決心しました。

眞壁伍郎さん、葉子さん、本当に貴重なお話をありがとうございました!!

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